夏の到来を感じさせる爽やかな早朝に、私はもうじき十年の付き合いとなるであろう『奴』との散歩に向かうことにした。

 奴は犬種の中でも比較的小柄で痩せているほうで(家での態度はでかいくせにだ!)、父犬譲りの白い毛並みをしている。そんな奴だが一歩外に出るとその尊大な態度はどこへやら、一変しておどおどして私のそばを決して離れず、何とも忠実かつ従順な散歩の手間のかからぬ子犬に変化する。

 小犬のくせに体力と運動神経は並外れており(これは母犬の影響であろう)、一度歩くとなると私の体力を根こそぎ持っていくような一面も存在し、大学入学以来体力の落ち続けている私にとって非常に運動の助けとなってくれる奴は健康志向の我が家にとって非常に大切な家族の一員である。

 そろそろ十年も齢を重ねようというのにその行動は全く子供そのものといってもよく、いまだにぬいぐるみのおもちゃで遊びたい盛りの老いを感じさせぬかわいい小犬である。

 一見馬鹿に見える奴であるが、人の感情の変化にも鋭く、私が涙を流しているときなどはそのそばを離れようとせず、カオをこすり合わせてくるのだ(甘えるときにもしてくるのだが、これがまた可愛らしい!)。

 しかしいくら老いを感じさせぬとはいえ奴も高齢者(犬?)となりつつある。これからは今まで以上にいたわっていく必要がありそうだ。